
豚肉の部位と特徴を知って美味しく活用!ハム・ソーセージの原料も紹介
豚肉は部位ごとに肉質や風味が異なり、それぞれに適した調理法があります。
普段の料理に活かせるだけでなく、ハムやソーセージなどの加工品にも特定の部位が使われ、素材の特性を生かした製法が採用されています。
本記事では、豚肉の代表的な部位の特徴とおすすめの活用法に加え、ハム・ソーセージの原料としての使われ方についても詳しく解説します。
代表的な豚肉の部位と特徴
① 首 Neck(ネック)
別名:とんトロ、Pトロ、首肉、ジョールミート
適した料理:焼肉、煮込み料理、炒め物
【特徴】
首のまわりの肉で、少量しか取れない。精肉部分の肩ロースを取った残りの部分の肉。脂肪は少なく、筋肉質で歯応えがあり、さっぱりとしている。赤みと脂肪が層を成しているのが特徴で、とろけるような食感と歯応えの両方が楽しめる。
【ハム・ソーセージなど加工品への活用】
日本では焼肉でよく食べられるが、フランスやイタリアではテリーヌやパテ、ソーセージなどの加工用にも用いられることが多い。イタリアの生ハム「コッパ」の名の由来は、もともとは豚の首の後ろ部分の部位の名称である。
② 肩 Picnic(ピクニック)
別名:かた(うで)
適した料理:シチュー、ポークビーンズ、カレー
【特徴】
肩から上腕部の肉。筋肉をよく動かす運動量の多い部分なので、赤身が多く肉はきめが粗めで硬く、色が濃い。ただ、筋肉の間に脂肪があるため、長時間煮込むとコラーゲンがゼラチン化して柔らかくなり、深い味わいになる。筋肉質な部位であるが脂肪がほどよく含み、しっかりとした赤身の旨味がある。
【ハム・ソーセージなど加工品への活用】
ソーセージの原料となるほか、身質がやや硬いので、シチューや煮込み料理に用いられる。炒める場合は薄切りにするのがおすすめ。また、挽き肉にも適している。
③ ロース Pork Loin(ポークロイン)
別名:ヘレロース、くらした、腰、バックストラップ
適した料理:とんかつ、ローストポーク、しょうが焼き
【特徴】
かたロースの後方から腰の部分。ヒレの次に肉のきめが細かく柔らかい。豚特有の厚い脂肪に覆われており、脂の香りがよく、旨味が凝縮している。豚ならではの香りと旨みをもつ脂身が美味で、厚切りにしてとんかつにするほか、塊のままローストポークや焼豚に、スライスしてしょうが焼きやすき焼きなど多彩な料理に活用できる。
【ハム・ソーセージなど加工品への活用】
ロースハムの原料になるほか、ソテーやとんかつなど幅広い料理に使われる。ドイツの有名な製品に「ラックスシンケン」がある。塩茹でしたものは煮込みやアスピークに。
④ ヒレ Tender Loin(テンダーロイン)
別名:フィレ、ヘレ
適した料理:ステーキ、とんかつ、ソテー
【特徴】
背骨の内側に左右1本ずつある棒状の赤身肉。1頭につき少量しか取れず、豚肉最上の部位とされる。脂肪が少なくきめが細かい最も柔らかな赤身部分。淡白で香りはあまりしないが、ジューシーである。あっさりとした味わいで低カロリーなので、とんかつやステーキといった油を使用する料理にあう。ただ加熱しすぎると硬くなるので気をつけよう。
【ハム・ソーセージなど加工品への活用】
1頭からわずかしか取れない最高級部位であるため、加工肉に用いられる事はほとんどない。メダルのように丸く形を整えてメダイヨンステーキなどにする。
⑤ モモ Topside(トップサイド)
別名:うちひら、まる
適した料理:ローストポーク、ステーキ、焼豚
【特徴】
比較的尻に近い「外モモ」と、脚の付け根に近い「内モモ」、その下側に位置する大腿骨の周りにある「シンタマ」に分けられる。3つの筋肉の塊から成る赤身肉。
赤身の多い部位で、きめが細かく柔らかい。ヒレ肉の次にビタミンB1を多く含み、脂肪が少ないため、様々な料理にあうが、特に塊のまま調理するローストポークや焼豚、ステーキなど肉そのものの味を楽しむ料理に向く。
【ハム・ソーセージなど加工品への活用】
ボンレスハムにも用いられる。「しんたま」は切り落としや煮込みにも使われる。他の部位に比べ、肉の色は淡く、みずみずしい。香辛料となじみやすい肉質で、ハムと言えば、元来この部位で作られるものを指す。
⑥ バラ Belly(ベリー)
別名:三枚肉、カルビ
適した料理:角煮、シチュー、酢豚
【特徴】
ロースなど背中の肉の下にある部位。脂肪と赤身が交互に三層になっていることから三枚肉ともいう。脂肪は香りがよく、豚肉特有の濃厚な味わいが堪能できる。
脂肪と赤身の厚さがほぼ同じでバランスよく層になっているものがよい。脂肪は多いが良質の脂身で風味がよく、身質はやや硬いがコクがある。
【ハム・ソーセージなど加工品への活用】
角切りにして煮込んだり、スライスしてソテーしたりするほか、ベーコンやラードにも用いられる。焼き豚やひき肉にしてパテなどにも向いている。あばら骨がついた状態で厚切りにしたものは「スペアリブ」と言われ、骨周辺の肉は特に旨みがある。
⑦ 背脂 Back Fat(バック ファット)
【ハム・ソーセージなど加工品への活用】
背中の皮の下にある厚い脂肪の層で、ダイス状にカットしてソーセージの生地に加える。上質な背脂はクセやくどさがなく、上質な甘みと旨味がある。バラ肉などの脂と比べて融点が高く、加熱しても、油が逃げることなく、風味がしっかり残る。サラミやテリーヌなどにも使用する。
⑧ スネ Shank( シャンク)
【ハム・ソーセージなど加工品への活用】
よく動かす部分なので、筋が多く、肉色は濃くて硬いが、ゼラチン質を豊富に含み、煮込むと独特の食感が得られることから、骨付きのまま煮込み料理に用いることが多い。ドイツのアイスバインが有名。
⑨ 舌 Tongue(タン)
【ハム・ソーセージなど加工品への活用】
舌は歯ごたえのある部位で、脂肪が少なく、あっさりした味わい。丁寧に下処理したのち燻煙したり、薄くスライスしてドイツの「ツンゲンブルスト」の材料になる。
また、根元のほうは脂肪が多く柔らかいため、薄くスライスして網焼きや唐揚げにするのがおすすめ。塊のままシチューにしても。正肉ではなく、内蔵と同じ扱いで下処理する必要があるため、これらの原料を用いたソーセージは、クックドソーセージ(調理ソーセージ)に分類される。
⑩ 頭 Head(ヘッド)
【ハム・ソーセージなど加工品への活用】
別名「チークミート」。部位によって「こめかみ」「ほほ」「つらみ」などと呼ばれる。弾力のある赤身肉で主に加工品に使われるほか、薄切り肉や挽き肉にされることも。またほほ肉は脂肪が多く「とんトロ」の一部を含む。コラーゲンを多く含む部分で、弾力のある肉質を活かして、フランスのテリーヌやドイツのプレスコプフなどに用いる。
舌と同様、正肉ではなく、内蔵と同じ扱いで下処理する必要があるため、これらの原料を用いたソーセージは、クックドソーセージ(調理ソーセージ)に分類される。
さいごに
豚肉の各部位には、それぞれ異なる特徴があり、適した調理法を選ぶことで美味しさを最大限に引き出せます。また、ハムやソーセージには特定の部位が使われ、職人の技によって素材の持ち味が活かされています。
今回紹介した部位ごとの特性を参考に、日々の料理や加工肉選びに役立ててみてください。