豚肉の部位早わかり|10部位の特徴と美味しい食べ方
豚肉は部位によって肉質や風味が大きく異なり、それぞれに適した調理法があります。本記事では、豚肉の代表的な10部位について、特徴とおすすめの食べ方、さらにハム・ソーセージの原料としての使われ方まで詳しく解説します。部位ごとの違いを知ることで、普段の料理選びがぐっと楽になります。
豚肉の部位一覧|まずは全体像を把握
豚肉は大きく分けて、首・肩・ロース・ヒレ・モモ・バラの「精肉部位」と、背脂・スネ・舌・頭といった「加工向けの部位」に分類できます。それぞれの部位を順番に見ていきましょう。
① 首(ネック)
首のまわりの肉で、1頭からわずかしか取れません。精肉として使う肩ロースを取った残りの部分にあたります。脂肪は少なく筋肉質で、噛むほどに歯応えを感じるさっぱりとした味わいです。赤身と脂肪が層になっており、とろける食感と歯応えの両方を楽しめます。別名は「とんトロ」「Pトロ」「ジョールミート」とも呼ばれ、焼肉や煮込み料理、炒め物に向いています。
日本では焼肉で食べられることが多い部位ですが、フランスやイタリアではテリーヌやパテ、ソーセージの加工用としてもよく使われます。イタリアの生ハム「コッパ」という名前は、もともと豚の首の後ろ部分を指す言葉に由来しています。
② 肩(ピクニック)
肩から上腕部にかけての肉で、「かた」「うで」とも呼ばれます。よく動かす部分のため赤身が多く、きめは粗めで色が濃いのが特徴です。ただし筋肉の間に脂肪を含んでおり、長時間煮込むとコラーゲンがゼラチン化し、深い味わいに変わります。しっかりとした赤身の旨味を持つ部位で、シチューやポークビーンズ、カレーによく合います。
ソーセージの原料としても使われるほか、身質がやや硬めなので煮込み料理に向いています。炒める場合は薄切りにするとよく、挽き肉としても活用しやすい部位です。

③ ロース(ポークロイン)
かたロースの後方から腰にかけての部分で、「ヘレロース」「くらした」とも呼ばれます。ヒレに次いできめが細かく柔らかい部位で、豚特有の厚い脂肪に覆われており、脂の香りと旨味が凝縮しています。厚切りにしてとんかつにするほか、塊のままローストポークや焼豚に、スライスしてしょうが焼きやすき焼きにと、幅広く活用できます。
ロースハムの原料としても代表的な部位で、ソテーやとんかつなど料理の幅も広いのが魅力です。ドイツには「ラックスシンケン」という有名な加工品があり、塩茹でしたものは煮込みやアスピックにも使われます。

④ ヒレ(テンダーロイン)
背骨の内側に左右1本ずつある棒状の赤身肉で、「フィレ」「ヘレ」とも呼ばれます。1頭からごくわずかしか取れない、豚肉のなかでも最上とされる部位です。脂肪が少なくきめが細かい最も柔らかな赤身で、淡白ながらジューシーな味わいがあります。あっさりとした味わいでとんかつやステーキに向いていますが、加熱しすぎると硬くなるため注意が必要です。

1頭からわずかしか取れない希少部位のため、加工肉に使われることはほとんどありません。メダルのように丸く形を整えた「メダイヨンステーキ」として楽しまれることが多い部位です。
⑤ モモ(トップサイド)
尻に近い「外モモ」、脚の付け根に近い「内モモ」、その下側の「シンタマ」という3つの筋肉から成る赤身肉です。「うちひら」「まる」とも呼ばれます。赤身が多くきめが細かく柔らかいのが特徴で、ヒレに次いでビタミンB1を多く含みます。脂肪が少ないため様々な料理に合いますが、特に塊のまま調理するローストポークや焼豚、ステーキなど、肉そのものの味を楽しむ料理に向いています。

ボンレスハムの原料としても使われる部位で、「しんたま」は切り落としや煮込みにも活用されます。他の部位に比べて肉の色は淡く、みずみずしいのが特徴です。香辛料となじみやすい肉質を持ち、もともとハムといえばこの部位を指すこともあります。
⑥ バラ(ベリー)
ロースなど背中の肉の下にある部位で、脂肪と赤身が交互に三層になっていることから「三枚肉」とも呼ばれます。脂肪は香りがよく、豚肉特有の濃厚な味わいを堪能できます。脂肪と赤身の厚さがほぼ同じでバランスよく層になっているものが良品とされ、身質はやや硬めながらコクがあります。角煮やシチュー、酢豚に向いている部位です。

角切りにして煮込んだり、スライスしてソテーしたりするほか、ベーコンやラードの原料としても使われます。焼き豚やひき肉にしてパテに加工されることもあります。あばら骨がついた状態で厚切りにしたものは「スペアリブ」と呼ばれ、骨まわりの肉には特に旨味があります。
⑦ 背脂(バックファット)
背中の皮の下にある厚い脂肪の層です。ダイス状にカットしてソーセージの生地に加えることで、コクと口当たりの良さを加える役割を担います。上質な背脂はクセやくどさがなく、甘みと旨味を持っています。バラ肉などの脂と比べて融点が高く、加熱しても脂が逃げにくいため、風味がしっかり残ります。サラミやテリーヌなど、幅広い加工品に使われる部位です。

⑧ スネ(シャンク)
よく動かす部分のため筋が多く、肉色は濃く硬めですが、ゼラチン質を豊富に含んでいます。煮込むことで独特の食感が生まれる部位で、骨付きのまま煮込み料理に使われることが多くあります。ドイツの伝統料理「アイスバイン」の材料として知られています。

⑨ 舌(タン)
歯ごたえのある部位で、脂肪が少なくあっさりとした味わいが特徴です。丁寧に下処理したのち燻煙したり、薄くスライスしてドイツの「ツンゲンブルスト」の材料になったりします。根元に近い部分は脂肪が多く柔らかいため、薄切りにして網焼きや唐揚げにするのもおすすめです。塊のままシチューに使うこともできます。正肉ではなく内臓と同じ扱いで下処理が必要な部位のため、これを原料としたソーセージは「クックドソーセージ(調理ソーセージ)」に分類されます。

⑩ 頭(ヘッド)
「チークミート」とも呼ばれ、部位によって「こめかみ」「ほほ」「つらみ」といった呼び方があります。弾力のある赤身肉で、主に加工品として使われるほか、薄切り肉や挽き肉にされることもあります。ほほ肉は脂肪が多く、「とんトロ」の一部として扱われることもあります。

コラーゲンを多く含み、その弾力を活かしてフランスのテリーヌやドイツの「プレスコプフ」といった加工品に使われます。舌と同じく内臓に準じた下処理が必要なため、これを原料としたソーセージもクックドソーセージに分類されます。
部位ごとの個性を知ると、料理も加工品選びも広がる
私たちハム工房では、こうした部位ごとの特性を見極めながら、それぞれの持ち味を活かす製法でハムやソーセージを仕立てています。同じ豚肉でも、部位が変わればまったく違う表情を見せてくれるのが面白いところです。
さいごに
豚肉は部位によって肉質や風味が大きく異なり、それぞれに適した調理法があります。ハムやソーセージにも特定の部位が使われており、職人の技によって素材の持ち味が活かされています。今回ご紹介した豚肉の部位ごとの特徴を、日々の料理や加工肉選びの参考にしていただければ幸いです。
筆者について
久松勇斗
ECエンジニアから、ハム職人へ。
2021年に新卒でアクセンチュアに入社し、大手企業のECサイトをつくるエンジニアとして経験を積んできました。現在はその経験を活かし、家業であるハム工房 HISAMATSUのオンラインストアを運営しています。
IT業界から食肉製造業へ。将来はハム職人として家業を継ぐことが目標です。今はECを通じて、手づくりハム・ソーセージの魅力を全国へ届けています。
一番好きな商品はアイスバイン。