食肉加工の技術とは?塩漬・熟成・燻煙・加熱の役割を解説

食肉加工の技術とは?塩漬・熟成・燻煙・加熱の役割を解説

食肉加工は、保存性や風味を向上させるためにさまざまな技術が用いられます。ハムやソーセージの製造過程では、塩漬、乾燥(熟成)、燻煙、加熱といった技術が活用され、それぞれに独自の役割があります。本記事では、これらの加工技術の基本とその目的を解説します。

食肉加工の主な工程

ほとんどの食肉加工品は、原料肉に塩漬や乾燥(熟成)、燻煙、加熱などの加工を施して作られます。製品によって工程の順序や方法は多少異なりますが、大きく分けると加熱するものとしないものがあり、それによって加工技術や製造の流れが決まってきます。

ほとんどの食肉加工品は、原料肉に塩漬や乾燥(熟成)、燻煙、加熱などの加工を施して作られます。

 

「塩漬」の加工技術とは?

塩漬は、食肉加工において最も基本的な工程の一つです。食塩や香辛料などとともに低温で一定期間漬け込むことで、保存性の向上や風味の調整が行われます。

塩漬けの方法には、以下のような種類があります。

  • 乾塩漬法:肉の表面に塩を直接すり込み塩漬する。長期間熟成タイプの生ハムなどに使用される。塩の浸透作用で、肉の水分を排出して雑菌が増えにくい状態にする。うまく漬け込めると余計な水分がなくなり、肉の旨みが凝縮されて深い味わいになる。ただし、表面と内部の塩分濃度の差が大きくムラが出やすいという難点があるため知識と経験が必要な方法でもある。
  • 温塩漬法(ソミュール法):塩や香辛料などを溶かした塩漬け液(ピックル液)に漬け込む方法。大型のハムやベーコンの製造に適している。ピックル液の塩分濃度と漬け込み時間で、塩味をコントロールできるため、製品が均一に仕上がりやすい。乾塩漬法と異なり、空気に触れない分、酸化しにくいという利点も。
  • ピックル注入法:塩漬け液(ピックル液)を直接肉に注入し、短時間で均一に浸透させる。筋肉注射法と血管注入法がある。血管注入法は骨付きハムなどの製造で用いられる。
  • エマルジョン塩漬法:ソーセージ製造時に、細切れの肉に塩漬け液を加えて混ぜる方法。約1日塩漬する。

塩漬は、食肉加工において最も基本的な工程の一つです。食塩や香辛料などとともに低温で一定期間漬け込むことで、保存性の向上や風味の調整が行われます。

 

塩漬の効果

  • 保存性の向上:塩の浸透によって水分が抜け、腐敗菌の繁殖を抑えられる。
  • 塩味をつける:適度な塩加減が、肉の旨みを引き立てる。
  • 肉の発色をよくする:塩漬中にミオグロビンが変化し、美しい赤色になる。
  • 熟成風味の醸成:酵素や微生物の働きで、深みのある味が生まれる。
  • 脂質の酸化防止:酸化を遅らせ、風味の劣化を防ぐ。
  • 保水性・結着性の向上:塩の作用で肉のタンパク質が変化し、保水性が向上するためしっとりとした食感になる。

 

「乾燥(熟成)」の加工技術とは?

乾燥(熟成)は、肉の風味を引き出すための重要な工程です。特に生ハムやドライソーセージなどの非加熱製品の製造には欠かせません。

主に2つのやり方がありますが、海外のほとんどのドライソーセージは発酵タイプであり、乳酸菌スターターを加えるものが多いです。

  • 自然熟成:乳酸菌や酵母の働きを利用して、長期間ゆっくりと熟成させる。
  • スターター活用:製造期間の短縮と発酵を安定させるために、乳酸菌スターターを用いる方法。

乾燥(熟成)は、肉の風味を引き出すための重要な工程です。特に生ハムやドライソーセージなどの非加熱製品の製造には欠かせません。

熟成の過程で、乳酸菌発酵が進行することで雑菌の繁殖を抑え、アミノ酸の旨み成分であるチロシンを形成する。このチロシンによって、適度な酸味と独特の旨み、香りが生まれます。

 

「燻煙」の加工技術とは?

燻煙は、食肉に独特の香りを付与し、保存性を高めるための工程です。燻煙を行う前に、肉をしっかり乾燥させることで、煙が均一に吸収されてムラのない仕上がりになります。燻煙には以下の種類があります。

  • 冷燻(16~22℃):生ハムなどの製造に用いられ、長時間かけて燻製する。
  • 温燻(30~50℃):ハムやソーセージなどに使用される。
  • 熱燻(60~90℃):発色と燻煙時間の短縮を目的として使用される。

燻煙は、食肉に独特の香りを付与し、保存性を高めるための工程です。燻煙を行う前に、肉をしっかり乾燥させることで、煙が均一に吸収されてムラのない仕上がりになります。

スモークの成分にはフェノール類やアルデヒド類が含まれており、これが肉の表面に付着することで雑菌の繁殖を抑えます。また、燻煙の過程で肉の水分が抜けるため、水分活性が低下してさらに保存性が高まります。

 

「加熱」の加工技術とは?

加熱は、食肉加工品を安全に食べられる状態にするために欠かせない工程です。加熱の過程でタンパク質の熱変性によって凝固し、製品に適度な固さと弾力が生まれます。そのほかにも色調が固定するなどの特徴があります。

  • ボイル加熱:お湯や蒸気で加熱し、しっとりとした仕上がりになる。
  • オーブン加熱:乾燥しながらじっくり加熱し、香ばしさを引き出す。

加熱は、食肉加工品を安全に食べられる状態にするために欠かせない工程です。加熱の過程でタンパク質の熱変性によって凝固し、製品に適度な固さと弾力が生まれます。

加熱の温度管理により、食肉の風味や食感が大きく変わるため、適切な手法を選択することが重要です。たとえば、ハムは約72℃で加熱するとしっとりとした仕上がりになりますが、85℃以上で加熱すると水分が抜けやすく、より弾力のある食感になります。加熱の温度管理によって、仕上がりの風味や食感が大きく変わるため、適切な手法を選択することが重要です。

 

まとめ

食肉加工には、塩漬・乾燥(熟成)・燻煙・加熱といった多様な技術が組み合わされています。それぞれの工程が肉の保存性や風味を向上させるために不可欠な要素となっています。これらの加工技術を理解することで、ハムやソーセージの奥深い味わいをより一層楽しむことができるでしょう。

食肉加工には、塩漬・乾燥(熟成)・燻煙・加熱といった多様な技術が組み合わされています。

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